大奥 第19巻 ネタバレ

大奥 第19巻 (完結) 著者:よしながふみ (2021年3月発売)

 

(帯より)

男女逆転SF歴史ロマンの大傑作、ここに完結。

(裏表紙より)

国を思う者、人を思う者。立場は違えど、願うのはこの国の民の安寧-。

 

以下、ネタバレです。閲覧注意してください。

 

 

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 新政府が樹立したが、未だに徳川慶喜は政権の実を握っていた。国を新しく生まれ変わらせるためには、新政府の要求(辞官納地)になかなか従わない慶喜には死んでもらわなければならないと西郷隆盛は考える。そのために、江戸で騒動(夜盗、略奪、付け火、そして江戸城の火事等)を起こし、戦の口火を切るように仕向けた。

 

 そして、慶喜幕臣達の暴走を抑えられず、京の鳥羽口と伏見口で新政府軍と旧幕府軍の戦闘が始まった。戦況は一進一退であったが、新政府軍が帝の軍旗である錦の御旗(赤い緞子に金銀の日月の旗)を掲げ「官軍」を名乗り、旧幕府軍を「朝敵」とした。

 

 それを知った慶喜は数名の側近を連れて大坂城を抜け出し、軍艦で江戸に逃げ帰ってきた。慶喜に呼び出された勝海舟は陸軍総裁に任命され、徳川軍全軍の統御と停戦交渉を委ねられた。

 

 さらに、慶喜は大奥に天璋院和宮を訪ね、助命を乞うた。2人は慶喜のためではなく、自分の愛した方が慈しんだ江戸の町と民を守るために手紙を書いた。しかし、2人の努力も空しく、西郷率いる東征軍が江戸へ迫ってきた。

 

 慶喜寛永寺に蟄居して新政府に恭順の意を示しているが、西郷の江戸を総攻撃し、慶喜の首を奪ろうとする意志は固かった。

 

 

 新政府東征軍の指揮官・西郷と敗軍の総大将・勝の談判が3月14日に行われることになった。勝は供の者として天璋院和宮を連れて行った。

 

 西郷は国を長い事女将軍に治めさせ、国を閉ざし世界から大きく遅れた国にしてしまった徳川を徹底的に潰すと言う。隣の部屋で待っていた和宮が乱入してきて、西郷に先帝の宸翰を見せ、物申す。

 

 西郷はしばらくの間考えて、ふと「家茂公は男子でごわしたな」とつぶやく。歴代の将軍の名は男名であり、事実もそうであったに違いなく、慶喜を殺す必要もないと。そして、和宮が「徳川の女達がやった事全部好きなように歪めてええ代わりに、この江戸の町だけは傷ひとつ付けんといて!」と言うと、西郷は深々と頭を下げた。

 

 ここに、新政府軍による江戸総攻撃は回避され、江戸城無血開城が決定した。

 

 

 江戸城の明け渡しが4月11日に決まった。天璋院は皆を集め、城の明け渡しの通達と今までの労をねぎらった。そして、4月3日に大奥最後の花見の宴を催す事となった。

 

 花見の宴、当日。藤と躑躅が盛りを迎えた、佳き日。瀧山は流水紋の裃を身に着けていた。静寛院宮と名を改めた和宮は異装を解き、十二単の装いで現れた。

 

 次の日から掃除が始まった。新政府軍が土足で踏み入った時、思わず足を置くのをためらうぐらいに美しく廊下を磨き、衣類に香を焚きしめ大奥に置いてゆく。

 

 瀧山の部屋の掃除をしていた仲野に、瀧山が話しかける。大奥を出た後奉公先を探すという仲野に、瀧山は「私の元に来ないか」と言う。仲野は泣いて喜ぶ。

 

 江戸城退去日、天璋院の流水紋の裃と瀧山の流水紋の裃を並べて置いた。それを、天璋院と瀧山は眺めながら、思い出にふける。

 

 長い廊下、シャンシャンと鳴る鈴、「上様の、お成り-!!」、この廊下を歩いた女将軍達。

 

 天璋院の立ち退き時に、大奥の一室で瀧山が腹を切って、倒れていた。

 

 

 新政府軍が大奥の鍵を開けた。足を踏み入れると、塵ひとつない廊下、見事な流水紋の裃達に言葉を失う。指揮官の男は一言「燃やせ」と。何もかも燃やしてしまえとの西郷の命令があった。そして、没日録も炎の中に投じられた。

 

 

 

 明治4年、太平洋を航行する船の上に胤篤(天璋院)と中澤はいた。サンフランシスコまで初渡航の2人に対し、6度目の洋行となる瀧山。

 

 御一新後、胤篤はすぐに島津家を出て、英語塾に通ったりして日々を過ごしていたら貯えを全て喰い潰し、今回の渡航費用は借金した。なので、瀧山に雇ってほしいと頭を下げる。中澤も「あなた様は胤篤様に大恩がございましょう」と、3年前の出来事を言う。

 

 3年前、大奥の一室で腹を切った瀧山を仲野が発見した。まだ息があり、中澤と天璋院の協力もあり、一命をとりとめた。瀧山の懐に懐中時計が入っており、それで致命傷にならずに済んだ。その懐中時計は家定公の形見だった。胤篤は「ならばそれはあの方の思し召しぞ」と。

 

 静寛院宮が見舞いにやってきた。黒木は瀧山の手当てをした医師は兄で、彼は家定の医師団の一人であり、家定の最後について話したいと胤篤に言う。そして、自身は今後は宮様に仕えるつもりであると。

 

 後日、瀧山の診察にきた黒木の兄と胤篤が家定の最後について話をしていた。胤篤は家定は毒殺されたのではないかと長年疑っていた。黒木兄は家定は病にて亡くなったと、臨終の際の家定の様子を話した。それを聞いた胤篤は涙をこぼし、「これでやっと…」と。

 

 場面は船上へ戻る。大奥勤めの時は元服前で前髪があり、愛くるしい少年だった仲野は、瀧山の養子に入り吉兵衛と名乗っている。背が伸び、前髪もなく、ひげも生えている。

 

 瀧山は実業家として成功しており、今回も商談のための洋行である。瀧山は目端が利き便利に使えそうな中澤を使用人として雇うことにした。胤篤はおまけだと。

 

 その船には日本初の外国への女子留学生の一団の少女達が乗っていた。その中に、6歳の梅という少女がいた。