ポーの一族「春の夢」 著者:萩尾望都 (2017年7月発売)
(帯より)
40年ぶり新作。「一族」の核心に触れる驚愕の新展開!
(裏表紙より)
舞台は、第二次大戦下のヨーロッパ。イギリス西部の島に滞在していたエドガーとアランはナチスドイツから逃れてきたブランカという少女と出会って-!?
「ポーの一族」待望の最新作はバンパネラの「一族」の核心に触れる意欲作。
以下、ネタバレです。閲覧注意してください。
<Vol.1>
エドガーはすてきなマフを持っているのに、はぐれてしまった小鳥のような心細い目をしている少女に出会う。ブランカと呼ばれた少女。
1944年1月 イギリス ウェールズ地方 アングルシー島にエドガーとアランはいた。
ブランカ(16歳)とノアはダン・オットマーの姪と甥。
オットマーの妻・ザブリナはドイツ人。2人は妻の妹・ヨハンナの子供たち。
ブランカはハンブルフに両親と弟と住んでいた。父親は楽器の工房をやっており、母親はチェロの奏者。料理人、乳母、職人がいる、にぎやかで歌でいっぱいの家庭だった。
ある日、水晶の夜と呼ばれるユダヤ人商店街が襲われる事件が起こる。両親はブランカとノアをイギリスに避難させた。
<Vol.2>
1925年パリの博覧会(万博)でファルカと出会う。彼はスラブ系で、レオパード柄のスカーフをして女装をしている同族。貧血気味のアランの手当てをしてくれた。
アランは眠りの時季。エドガーがファルカを呼んでみると、彼は飛んできてくれた。彼によるとアランは「気」のヒフが薄いからすぐ漏れると。また治してもらう。
ファルカは紅(あか)ルーシという滅んだ国出身。
ブランカとノアがエドガー達の家を訪れた時、エドガーは手紙を受け取っていた。ファルカに留守を頼み、一週間ほど出かけていった。そして、ホテルの一室で、ポーの村から来たクロエという女性と会っていた。
<Vol.3>
クロエはエドガーの「気」を吸っていた。
エドガーが村に戻ってくることは歓迎するが、アランはダメだと。一族に加わるには承認と儀式が必要で、アランはルール違反だと。アランに手を出さない代わりに、エドガーが年に一度「気」を分ける契約を守っている。
クロエは若返って喜んでいる。
エドガーは赤い家に帰ってきた。
ファルカの飛んできたという言葉について聞いていた。ファルカは「スキマ」を通り抜けてどこでも行けると、エドガーの手をつかみ壁の中へ。中は霧か雲みたいで、エドガーは何もない感覚に襲われる。時間的には1分ほどで戻ってくる。ファルカは吸血鬼になってからその力がついたと。
ファルカは14歳の時に兄が死んで、兄嫁(妊娠中)と結婚した。妻とは館で別々に暮らして、生まれた子はしゃべらなかった。その子がふたつの頃、始めて「ファルカ」としゃべった事がきっかけで、その後の結婚生活はうまくいった。それから10年後、戦に負けて両親、妻、5人の子供たちもみな死んでしまった。その後、吸血鬼になったと。
アランの治療が終わり、ファルカはパリに帰っていった。
オットマー家ではダンの母とサブリナが話をしていた。
母はオットマー家の男たちは「眠れない病」にかかって、死んでしまうと。原因はわからず、眠れなくなる。母の夫、長男もそうだったと。
22年前、夫が亡くなる前にある男が訪ねてきた。男は「望むなら生き返ることもできます。ただし、人間にはもどれません」と言い、母は男を追い帰した。5年前の長男の時にも現れて、同じ言葉を言った。母はまた追い帰した。そして、男はこの春にまた現れて、同じ言葉を言った。母は答えた、「望みます」と。
<Vol.4>
数日後、エドガーたちの家にファルカがやってくる。パリで戦勝パレードがあるから一緒に見に行かないかとアランを誘うが、エドガーはダメだと言う。アランを連れて行きたいファルカとエドガーが口論になる。「ファルカは子供の面倒を見られないので、子供は長生きしない」とエドガーが言うと、ファルカは怒り「二度と呼ぶな」と言い、姿を消す。
アランはパレードに行けなくなり、拗ねて家出する。
家にひとり残されたエドガーの元にクロエがやってきた。もっと若返りたいので、「気」をよこせと。アランを人質にとったとも。
クロエが無理やり気を奪っていると、何者かがクロエの気を奪い尽くす。その者はシルバーを呼び、アランを返してやれと。クロエは地下に閉じ込めて、ポーの村はシルバーが統治するようにとも言った。シルバーと呼ばれた男性は是といい、クロエを連れて帰って行った。
オットマー家ではダンが亡くなった。
<Vol.5>
8月の雨の降る寒い日にオットマー家では葬儀の準備がされていた。
夜、棺の傍にいたダンの母の元を男が訪ねてきた。男は「あなたは望みましたね」と。そして、自分は200年ほど前のオットマー家の先祖だと名乗る。彼はこれから目覚めて永劫の時間を生きることになるでしょうと。
そこに大老ポーとエドガーが別々にやってくる。大老ポーはオットマーはナポリの別の一族で、彼の一族の名は「ルチオ」、基本男しかいないと言う。お互いに助け合っているとも言う。
翌朝、ダンの葬儀の日、雨上りの川で鉄砲水が発生した。ノアが呑み込まれ、行方不明に。3日目になっても見つからず、ブランカは自分を責め、無意識に川へ入る。そこをオットマー家の運転手に助けられるが、彼はブランカに好意を持っており、襲おうとする。振り払い、塔の上の方へ逃げるブランカ。
エドガーも塔にやってくるが、運転手に穴に落ちたと言われて中に入ると、蓋をされて閉じ込められてしまう。
<Vol.6>
塔の上の方へ追い詰められたブランカ。
穴の中でブランカの声が聞こえ、姿が見えるエドガー。手を伸ばすと、空間を通り抜けてブランカの元へ。運転手の腕を掴み、気を吸うと、運転手は足を踏み外し転落する。
そして、ブランカを救おうと手を伸ばすが、エドガーの豹変に怯え、髪が真っ白になり、足を踏み外して塔の外の川に落ちてしまう。
助けに行くが、瀕死の状態である。エドガーはファルカを呼び、ブランカを仲間にして助けてほしいと頼む。ファルカはブランカを花嫁にすると。
そこにシルバーがやってくる。クロエが村中のバラを枯らして逃げたと伝えに来たのだ。
ファルカはトラブルに巻き込まれたくないため、眠ったままのブランカを連れてパリへ帰った。
エドガーとアランは…。
オットマー家ではダンが目覚めた。ご先祖様と一緒に、ベニスに向かう。
行方不明だったノアが生きて見つかった。
だが、今度はブランカの行方が分からない。ブランカの靴が1つは塔の中で、1つは川の中で見つかった。
運転手は塔の中で死んでいた。
赤い家には誰もいなかった。
エドガーとアランは汽車に乗っていた。2人はあの家が好きだったと。フランス・パリへ向かっている。
ノアは大学生になった。普段はリヴァプールに住んでおり、夏休みだけ赤い家を借りている。赤い家にノア、ザブリナ、ノアの母親・ヨハンナがいた。
ノアは「春の夢」を歌っている。ふとした瞬間にブランカの歌声が聞こえた気がした。
館からダンの母が迎えに来る。母はベニスに行っていたと。
みんなで館へ戻って行った。
赤い家から離れたところにファルカとブランカがいた。
近づいてみるかと言うファルカに、ブランカは「あの人たちがしてるのは死んだ人の話。あたしは思い出になってしまった」と。
あの頃、春の夢を見ていた-
終